私がモニターを始めたころは、アルツハイマー病の治験など中枢薬の治験が多かった印象がある。そんな中、私は循環器系の薬の治験を行うため、全国24施設を飛び回っていた。
その時その時で、トレンドな薬の開発が行なわれている。一方、トレンドに乗ることはなく領域をある程度絞って研究開発を行っている企業治験もある。
例えば、呼吸器疾患に特化した研究開発を行う企業では、その中で働くモニターは、呼吸器系の知識が豊富である。

 企業のモニターと派遣のモニターには違いがある。企業のモニターは会社の製品や競合他社の製品の知識があるが、派遣モニターには、残念ながらそれらの知識はほとんどない。そのため、実施計画書の「はじめに」「開発経緯」の部分が理解されていないことがある。責任医師や大学の教授などは、この治験をなぜやるのか、どうしてこの薬が開発されてきたのかに興味を示すことがあり、その要求に対して満足させることができない。

 「CRA経験3年以内のモニターが身に着けるべき知識、スキル」では、社内の教育制度を活用した例を示す。3年目の社員がモニター1年目の教育を行うことを、私はお勧めする。人に教えるためには、かなりの知識を入れておかないとできないからである。
つまり、1年目のモニターに教育するだけでなく、3年目のモニターの教育、自ら勉強することを狙っている。ただし、正しく教えることができる先生も同席させ、間違ったことを教えないように、あるいは3年目のモニターの知識を正しく補正することもできるようにする必要がある。モニター教育を専門の業者に頼んでいる場合には、専門業者に監督になってもらう。何を3年目のモニターに教育させるかについては、本人の得意な領域とし、それを伸ばすようにする。

 さて、あなたの得意とするものは何であろうか、この得意という意味は人よりすぐれていることではない。
この得意なことをやっている時は、集中できているとか、あるいは苦痛をあまり伴わず、あっという間の時間が過ぎているようなものを意味する。英語が得意でも英語の科学論文を読むことは面白くないし、苦痛であるという人がいれば、私のように英語は苦手だが英語の科学論文を読むことは苦痛ではないという人もいる。

 最近では、グローバルスタディが増え、英語で記載された実施計画書を読み、症例報告書へは英語で記載するケースが出てきた。できるだけ早いうちに英語力を身につけることが必要である(私は会社に入ってから苦労したので)

何故なら、海外の製薬企業が日本で治験を行う場合、CROを選択する優先順位の中に英語力の有無が上位になっているからである。そして、さらに私は言いたいのは、英語ができる意味は少し違っていることを理解してほしい。
例えば、海外の薬を導入する際に、日本語に翻訳をするが、ただ英語を日本語にすることでは、正しい翻訳にはならず、奇妙な言葉を生み出してしまうことがある。
当然なことではあるが、日本語ができればCRAになれるわけではなく、医学・薬学の知識が求められるわけである。正しい翻訳ができること、それを目指してほしい。

 モニターを3年目も続けると自分の得意なものが見えてくると思う。
そこで、次に考えることは、得意な領域を増やすことに取り組むのか、それとも得意な領域をもっと掘り下げていくのかである。多分、読者の多くは両方を選択されるであろう。
次のテーマの実施計画書が配布されれば、それを実行するためには新たな知識が必要となり、得意の領域が増えるであろう。しかし、実施計画書が変わっても変わらないこと、例えば、治験事務局との手続きやその流れなどは、施設ごとに多少は違うが大きく異ならないはずである。
余談であるが、新GCPがスタートした平成9年の頃は、施設により手続きが大きく異なっていた。
ある施設では、申請書は手書きが要求され、小さい枠に記載することを強要された。一生懸命に小さく手書きで書いて行くと、「こんな小さい字は読めない」と怒られた。今では、懐かしい記憶である。

 私が考える「CRA経験3年以内のモニターが身に着けるべき知識、スキル」で1番は、病院内のシステムを理解することである。例えば、採血により血糖値を知りたい場合、A病院では、採血の時間は朝の9時、B病院は治験の採血は医師が行う、C病院は採血室に行く、など、施設の事情によりバラバラである。では、空腹時血糖はどうやってとれば、できるのか、それも実施計画書に従って行うという条件が付く。このようなことが起きても3年目のモニターでは治験を進めることができるはずである。

Text by Jun.Kojima 一般社団法人 医療資源開発研究所 代表理事