インタビュアー:他にどんな例がありますか?

川崎さん:薬を処方したいのに患者が拒否している女性がいると医師から相談を受けました。その方は卵巣がんを患われていて、若くて子供もまだ小さいとのこと。抗がん剤治療の副作用によって骨髄抑制があり熱発しているのでその治療として1本の注射を勧めたところ、治したいけれど高額な注射は打ちたくないとおっしゃったそうです。

そこで、高額療養費制度があるから、たとえ治療費が高額になっても支払うお金はほとんど増えないことを、院内のがんライフアドバイザー®の方からその方にご説明していただくようにして、処方につながりました。

インタビュアー:制度があることを知らずに、治療費を考えて選択肢を狭めてしまっている方もいるんですね。

川崎さん:この女性もそうだったのですが、お金を管理している女性は、お金はあるけれど、家族のためのお金だから使いたくない、心情的にそれに自分が手を付けるのは心苦しいと考える傾向があります。
また、治すための抗がん剤なら無駄ではないけれど、対処療法は自分が我慢すればいいと考えます。補助や再発予防のためにお金をかけるのも躊躇しがちです。

また別のケースで、夫ががん治療によって休職状態が2年近く続き、経済的に困っているという奥さんからのご相談がありました。
障害年金を請求してみるご提案を奥さんにしたところ、そんな障がい者という烙印を押すようなことは、とても夫に言えないと言われてしまいました。

その奥さんは、旦那さんにはみじめな思いをさせずに、今までと変わりのない生活をさせたいと考えていました。私はその時、障害年金を請求できる条件と当てはまり、定期的な収入となるから、これは良案だと思ってしまったのですが、本当はそうではありませんでした。

制度ではなく、患者さんやご家族を見ないといけないのです。患者さんやご家族の思いがまずあって、タイミングがあったところで、自分で手を挙げて制度を使うべきなのです。

インタビュアー:本当にその通りですね。

川崎さん:これは薬でも同じことで、こういう条件だからこの薬を使うのがベストだと考えるのは短絡的で、受ける側の患者さんとご家族の気持ちが合ってこそ処方できるものです。

この患者さんの場合、半年経ってからご夫婦で来て、この間聞いた障害年金はどうしたら受けられますかというご相談がありました。ご主人が請求したいとおっしゃったそうです。提案したときは行動につながらなかったけれど、情報としては伝えておいたことで、適切なタイミングで選択肢を使えたわけです。

Part① がんライフアドバイザーとは?

Part② 癌治療についてと、実際に処方に至るまで(前編)